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サタデーナイト・スペシャル イチローの引退会見に思う(会見全文掲載付)

2019年3月21日深夜23時57分から始まった1時間25分の長時間に渡るイチローの引退会見(*1全文掲載)。縁があるのか第六感が働いたのか、リアルタイムに観ることができました。 それは、完璧な作品であり、その内容は、まさに真実一路そのものでした。 今後の身の振り方について、イチローは、監督にはなれませんよと言ってましたが、日本が誇る世界のスーパースター・イチローはすでに最高の教師ですね。 そして、子供の頃のあの日を思い出しました。昼間に外で野球をしていると、出歩いている大人はまったくいなくて、長嶋茂雄の引退セレモニーの中継音があちこちの家の開け放たれた窓からステレオになって聞こえてきた、あの異様な光景。いや、いま思えば平和感漂う最高の光景。 最高の光景から数十年経って、最高の授業を受けることになるとは思いもよらない。 翌日の22日18時過ぎ、イチローは全日空の粋なはからいで、背番号と同じ51番のゲートからシアトル行きの飛行機で弓子夫人とともに飛び立ちました。 3、2、1。ゼロ。 縁があるのか第六感が働いたのか、テレビのモニターを通じて見送ることとなりました。 51。 ただちに、エンジェルナンバーのメッセージを確認しなさい。(了) ************************************************* *1イチロー引退会見全文。AERA dot.編集部掲載より引用。 ************************************************* ──(司会)まずは、イチロー選手からみなさまへご挨拶がございます。  こんなにいるの? びっくりするわ。そうですか。  こんな遅い時間にお集まりいただいて、ありがとうございます。  今日のゲームを最後に、日本で9年、アメリカで19年目に突入したところだったんですけど、現役生活に終止符を打ち、引退することとなりました。  最後にこのユニフォームを着て、この日を迎えられたことを大変幸せに感じています。この28年を振り返るには、あまりにも長い時間だったので、ここで一つ一つ振り返ることは難しいこともあって。これまで応援していただいた方々への感謝への思い、そして球団関係者、チームメイトに感謝申し上げて、みなさんからの質問が

サタデーナイト・ショートノベル Yokohama Bay K. 第3話

「はい、どうぞ。お通し」 「美味しそうな卵焼きだ。おっ、枝豆入り!得意なやつだね」 天井の照明が放つやわらかい光が、ゼブラ柄だが和のテイストを感じさせる小洒落た小皿に載った卵焼きの美味しさ、色合いを一層引き立てる。 俺は、シャンパンを一口飲んでは、卵焼きをつまんでみた。 「うん、うまい。この味だよね、懐かしい味」 「一樹は、いつも美味しいって言ってくれるから、ほんと嬉しい。作り甲斐があるよね」 「歌穂の卵焼きはさ、美味しいお寿司屋さんの卵焼きに負けないと思う。それに、枝豆の入った卵焼きなんて、歌穂が作ってくれるまで食べたことなかったしね。初めて食べた時は、凄く感動したよ」 「昔、そういえば一樹の職場にお弁当作って持ってったことあったね。懐かしいなぁ。でも最近のお寿司屋さんって、卵焼きを一から作ってるとこって、少なくなったよね」 「そう思う?卵焼きで寿司屋の格が決まるって、死んだ親父から聞いたことがあるけど。なんかさ、日本の美味しい食文化がこのままだと、近い将来潰えてしまうんじゃないかって心配しちゃうよな」 「確かにそうかも」と相づちを打ちながら、歌穂が空になったグラスにドンペリをつぎ足してくれる。グラスの中を見やるとシャンパンの小さな気泡が勢いよく上がっていくのがよくわかる。 「そうそう、今日パクチー餃子を作ってみたの、ベトナム料理。パクチー大丈夫だったっけ?食べてみる?ヘルシーだよ」 「いいねー。もちろん。餃子好きの俺だけど、パクチー餃子は食べたことがないな。楽しみ」 すると、お店の電話が鳴った。 歌穂は「ちょっと、ごめん」と言いながら、受話器を取った。 「はい、ヨコハマ・ベイ・ケイでございます」 お店の壁に掛けられた時計の針は夜の20時半をまわっていた。(つづく)

観光立国モナコ・モンテカルロに旅行するなら知っておきたいお話

モナコに対する見方がガラッと変わりました。この国は、意外にもベンチャー・スピリット満載の国なんですね。 昨日、モナコ公国をテーマにしたドキュメンタリー映画"Monaco: Back to the Future"を観る機会をいただきました。監督は、ジャーナリストのクリスティーヌ・オベルドルフ氏です。 2019年のモナコが掲げる国のミッション・テーマは、「レスポンシブル・ラグジュアリー」(Responsible Luxury; 地球に優しいラグジュアリー)。モナコ大公アルベール二世が先見の明に長けており、リーダーシップを発揮し、環境保護目的で、ソーラー(太陽光)発電の飛行機で世界一周するプロジェクト(ソーラーインパルス)を成功させています。その他電気自動車や水素船等、素晴らしい技術革新を推進していることを知りました。 個人的には、モナコと言えば、ただただF1観戦を楽しみたいだけのくちですが(F1大好きなんです)、リゾート・カジノその他にも楽しめるエキサイティングな世界がいろいろとありそうです。 モナコは元々は貧しい国だったらしく、今では世界中の裕福な人たちが集うリゾート観光立国です。モナコという国のビジネスモデルに興味が湧いてきました。以前、シンガポールという国のビジネスモデルもユニークと感じましたが。共通点は、どちらもリーダーがしっかりしていて、小さな国だということ。その時代、直面する現実を冷静に分析して、未来に向かって機敏に動くということが大事ということですね。 レセプション・パーティーでは、フランス語でシャンパンを乾杯しましたが、フランス語はジュ・テーム(私は君を愛してる)しか知らないので、少し後悔しています。普通の会話ができるように、たまには、フランス語も勉強するべきだと。(了) #monaco #montecarlo #greenisthenewglam #shift

サタデーナイト・ショートノベル Yokohama Bay K. 第2話

「ひさしぶりだねー。来てくれてありがとう。何年ぶり?」歌穂が、大きな黒い瞳を輝かせながら言う。 髪の毛は、相変わらずの明るいブラウンカラーにロングヘアー。柔らかい雰囲気の白の襟シャツ。細長い指には、艶感がたまらないナチュラル感たっぷりのヌードなネイル。 変わってない。そう、俺は思った。 「何年ぶりだろう。5年ぶりぐらいじゃない?もう、もしかしたら会うことないかなって、思ってたよ」 「そう?あたしも、いろんなことで疲れちゃってしばらく海外逃亡しちゃってたからね。そう思われても仕方ないか」 「横浜のロケーションとしては、ビールで一杯目は行きたいところだけど、歌穂の新たな門出を祝うということで、シャンパンで乾杯しよう」 「一樹、ありがとう。あるわよ、ドンペリ。いま開けるから。待ってて。さぁ、立ってないで、座ってよ。ゆっくりして」 ニューヨークのソーホーあたりのお店にありそうなアンティーク調の椅子に、俺は腰を下ろした。 カウンターには、歌穂お得意の美味しそうでカラフルな世界各国のお惣菜たちが、暖色系のお皿とともに所狭しと広げられている。木製の壁には1980年代に流行ったような大きなラジカセが組み込まれるようにしてオブジェになっている。 「壁にラジカセ?オブジェ?面白いんだけどさ」 「あ、そのラジカセは、前にミラノに行った時にセレクトショップで売ってたやつ。ラジカセがリバイバルだってことで、面白くなって買って持って来ちゃったの。オブジェというか、ちゃんと、それ音出るからね。友達のDJが編集してくれたカセットテープあるけど、かける?」 「それは当然、ソウル、ファンク系だよね?」 「もちろんでしょー」 横浜といえば、ソウルミュージックをBGMにしたいところではある。 「うーん、やっぱりいいや。あとで」 「そう。わかった」 しばらくは無音の世界で数年ぶりの再会という時を過ごしたい…そんな気がしたのだった。(つづく)

チェターラ産カタクチイワシの魚醤パスタ

世界一美味しい料理とは、彼女が作る料理だと思ってる。とは言いつつも、小さな声になってしまうが、僕も、料理を作ることがちょっとした楽しみだったりする。めったに作らないけどね。「男の料理は、15分で作る」それが、僕の持論。でしゃばらない程度に、簡単に作れちゃうのがいいってわけ。 いま一番、作ってみたい料理が、コラトゥーラ・パスタ 。最近、コラトゥーラの話を聞くことがあって、以前イタリアで買ってきてほしいと友人に頼まれたことがあったあのコラトゥーラ(魚醤)だと思い出した。当時、自分の分もついでに買って帰ったものの、サラダにかけて食べたりしたが、しょっぱい味というのが強い印象でどこか物足りない味の調味料という記憶しかない。 ところが、そのコラトゥーラの話では、イタリアでコラトゥーラ・パスタというのがあるということで、作り方を紹介していた。絶品だという。作り方(一人前)はというと、コラトゥーラ大さじ2杯、オリーブオイル大さじ4杯、にんにく、イタリアンパセリのソースに、茹でたパスタを和えればできあがり。 これは、めちゃくちゃ美味しそうな気がした。料理時間も15分以内。男の料理ベーシック部門のレシピに認定決定だ。たまには、いつも美味しい料理を作ってくれる彼女に男の料理でおもてなしするのもいいなと思った。 Spaghetti con colatura di alici di cetara(スパゲッティ コン コラトゥーラ ディ アリーチ ディ チェターラ)という、イタリア語のタイトルを添えて。日本語にすれば、イタリア・チェターラ産カタクチイワシの魚醤パスタなんだけど、イタリア語だと本場っぽくていいでしょ。 コラトゥーラ・パスタを食べている時の彼女の顔の表情の変化を観察するのが今から楽しみだけど、まずは隠れて試作だね。(了)

エディ・スリマンによる新生セリーヌ(CELINE)、ついに東京表参道にオープン。

今日2019年3月4日は、セリーヌ(CELINE)が、メンズ・コレクションを日本でもいよいよオープンということで、東京・表参道のショップへ春の冷たい雨の中、足を運んでみました。 オープン初日の訪問は、混雑も予想され遠慮しようかとも思いましたが、業界では長年話題に事欠かないエディ・スリマンが昨年セリーヌのクリエイティブ・ディレクターに就任して最初のメンズラインナップのローンチということで、記念すべき瞬間はこの目で確かめておこうと。 結果、感想ですが、行って良かったです。 セリーヌのロゴからアクサンテギュを取るという、昔からのセリーヌファンによる反発も激しかったブランディング戦略にはじまり、メンズラインナップの初展開と、新しいセリーヌを日本のファッションの発信の中心とも言える表参道でどのように表現するのか。 2019年春夏のテーマは、「Paris La Nuit(夜のパリ)」 ネットで流れていたパリコレのニュース記事の写真は、既にチェックしていましたが、どうも平面的にしか映らない印象はイマイチでしかなく、しかし実際にショップで見たコレクションはとてもツヤのある夜のパリをロック・テイストなエレガンスで表現しているように感じ、個人的にはとっても好感触なものでした。 百聞は一見に如かず。 宣伝写真も自ら撮影しているとも聞き、表参道のショップの空間デザインもエディによるものということで、エディの世界を堪能できたのはいい刺激となりました。 日本にもいい風を吹かせてくれそうな新生セリーヌ。 そうだなぁ。ひとりで楽しむというよりは、大人の男と女がふたりでセリーヌを身にまとって夜の街に出かけて楽しむ。そんな楽しみ方が、セリーヌ流ジャパン・ロック・エレガンスな感じでよいのではないかな、なんて思ってしまいますね。(了)

サタデーナイト・ショートノベル Yokohama Bay K. 第1話

横浜港側から吹いてくる少し冷たい強めの海風を背中に受けながら、俺は、K.の重い扉を開ける。すると、以前と変わらぬ彼女の笑顔が飛び込んできた。 初めて入るその店内は、あまり広くない。簡素だが、全体的にウッディーな雰囲気は、テーブルに並べられた木製のフォークやスプーンの懐かしいやさしいフォルムも手伝って、一日の仕事を終えて少々疲れ気味の俺にとっては、どこか暖かみを感じさせるものだった。そして、目の前にいる彼女は、確かに歌穂に違いなかった。(つづく)